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昭和慕情 後編

母が奥さんの願いを聞き入れたおかげで、青桃は大人のママゴトごっこに付き合わされる羽目になったのだが…昭和慕情、後編。白いスーツに派手なピンクのブラウスとめかし込んだ奥さん、青桃の手を引くとおっちゃんの愛車クリーム色カリーナに颯爽と乗り込む。母なんぞのご身分では寄りつきもしないようなブティックや靴屋なんかの専門店へと青桃を連れ回した。行く先々で「お母さん」と呼びかけられては奥さんはご満悦だった。青桃も子供ながらにそこは空気を読んで、本当は違うの何だのと野暮な言は一切口にせず愛想笑いを浮かべていた。奥さんは「欲しい物なあい?何でも買ってあげる」と上機嫌。“いい子”にしていたご褒美なんだと、ずっと欲しかった二四色入クレパス(大抵は一二色で二四色は贅沢品だった)と塗り絵ノートをおねだりする。奥さんは早速文房具屋へ。気前よく買ってくれた。
ママゴトごっこの締めくくりは駅前の純喫茶。ふたりしてミックスジュースをいただく。テーブル一杯に塗り絵ノートを広げる青桃に、満足げにほほえむ奥さん。ふと奥さんがくわえたストローの跡を見て青桃ぎょっとする。そこにはべったりと深紅の口紅が。これほどくっきりはっきり口紅の跡を見るのは初めてだった。奥さんは口紅の跡を指で拭う。横目で伺っていると奥さんはストローに口を付けると、その都度指で口紅を拭う仕草を繰り返してた。それはもう条件反射であるかのごとく。正直あまり気色の良いものではない。ストローにこびり付くほどそないに口紅張り込まんかてええのに…あまりの生々しさに不快感を覚える。ミックスジュースを飲み干さぬまま、バッグからコンパクトを取り出す奥さん。その顔はまるで化粧という名の虚飾で塗り固められた鉄壁の砦、もはや素顔を垣間見る隙さえ無い。化粧直しと称しさらに虚飾を塗り重ねていく。こんなことは今に始まった訳ではあるまい。化粧なんて奥さんにとっては日課のようなもの。毎日飽くことなく塗っちゃあ落とし塗っちゃあ落とし…なにも奥さんに限った話ではない。世の女達だって押し並べて似たようなもの。ましておっちゃんたちは世の女達に来る日も来る日も同じ作業を繰り返させることで生計を立てている。生きるとは不毛なる反復なのか。そうして人は齢を重ねやがては老い朽ちていくのか。幼心にもぞっとして塗り絵の手を止める青桃であった。
あれから間もなく奥さんは突如おっちゃんのもとを去っていった。失恋は50過ぎの身には甚だ応えたのであろうか、おっちゃんは仕事も手につかずしばらく呆けていた。が2,3ヶ月もするとまたもとのおっちゃんに復活していた。それからというもの化粧品は販売員は置かず自分で売るようになった。濃い化粧は薄い幸、マットなルージュは寂しさのあかし。以上、昭和慕情でした。

1000ピースプロジェクト 千林昭和博覧会《昭和にタイムスリップ!力道山からバブルまで》、
日時:11月14日(土)11時~16時、
場所:千林ふれあい館、
※入場無料、

割り箸鉄砲&マーブリングワークショップ(参加費100円)も開催。
割り箸ゴム鉄砲とマーブリングポストカード製作します。
1回目11:30~ 2回目13:30~ 3回目15:00~、

詳しくは、千林昭和博覧会HP迄 http://1000ppj.jp/talksalon/senpaku