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夏の日の泡沫の思い出


台風21号。沖縄で観測史上最高の最大瞬間風速81.1mを観測されましたが。
16号、18号と台風が相次いで上陸後、日本列島を嘗めるがごとく北上し、あれほど強烈だった酷暑を一掃してしまった。
台風一過にわかに涼やかな初秋の風が立ち、朝晩は肌寒さを感じるくらい。いよいよ今年の夏も幕引きか…11日間連続で続いた猛暑日ですら嘘のよう、あまりの引き際の潔さに却って寂しさが募る。
と思いきや、ここに来てちょっぴり暑さがぶり返してきたのか昼間は汗ばむ陽気。残暑か…まあそれも悪くはない。今のうちに夏の名残を愉しもう。何でもない夏の想い出をひとつ。

小学生の頃のこと。
友達ん家のガレージでその家の息子こうちゃんと並んでラムネを飲んでいた。
青桃は戯れに飲みさしの瓶を日の光にかざしてみる。栓になっていたビー玉が陽光に照らし出され淡い碧瑠璃色(へきるりいろ)に輝く。
「この中のビー玉欲しいわ~」と瓶の口を覗き込んだり指先を突っ込んだりしてみる。
するとこうちゃん、ラムネを一気に飲み干すと空の瓶片手に振りかぶる。と、カールーフの柱目がけて力任せに投げつけた。硝子瓶は激しく音を立て砕け散った。まさかの事態に呆気にとられる青桃。
野太い金属音がキーンと余韻を漂わせていた。転がり出てきたビー玉を、こうちゃんは拾い上げると事も無げに青桃の掌(てのひら)にのせてくれた。ふたりはにんまりと顔を見合わせる。
破壊に伴う騒音や残骸といった不快感や、取り返しのつかないことをしてしまったという罪悪感。それとは裏腹のささやかな興奮と秘めたる狂気、ぞくぞくするような快感。相反する二つ感情が共鳴し合う不思議な感覚。物を壊す味を覚えた瞬間だった。
ビー玉は今でも大事に取っておいている。

光にかざして中を覗き見ると、硝子球に閉じ込められた気泡の数々がまるでラムネの炭酸泡みたく、今にもシュワシュワっと音が聞こえてきそうな。その泡ひとつひとつに夏の日の泡沫(うたかた)の想い出が、凍れる時が封じ込められている。炭酸あわ色ラムネ色。壊れることのない泡。消えることのない記憶。