2015年05月

第5話-最初の晩餐-

ここは大阪千林。下町風情が今に息づく横丁。そっと耳を澄ませば聞こえてくるはず。不機嫌な気まぐれものたちの呟きが。「ひとりが好きなわけやないけど、だれかと一緒もきゅうくつ」俗世の垢にまみれ日々あくせくする横丁の住人たちをよそに、日がな一日ごーろごろ。退屈しのぎにぶーらぶら。そんな猫たちのお気楽な横丁暮らしを見るにつけ、物憂さなんてどこへやら。「喜びも悲しみもつかの間。のんびりいこや。生きるってメランコリーにあふれてるんやから」

「ただいま。さあ夕飯や夕飯や」

と、伯父さんは両手にレジ袋をたんと抱えて千林からご機嫌に無事ご帰還する。

早速珠子と子猫ふたりしてレジ袋の中身を物色する。

「何これ。まじで豪華じゃん。コンビニ行ったんじゃないんだ」

「お前なぁ…」

珠子のコメントにあきれ顔の伯父さん。

子猫はというと、大胆不敵にもレジ袋に体ごと突入。前足でビニルを掻き掻きしてじゃれついている。ビニルのバシバシする触感とビリビリと小気味いい振動(バイブレーション)がいたくお気に召したらしく、いささかご執心の様子。

「で、キャットフードは?」

「そや、まずは猫飯から」

伯父さんは子猫のしっぽをつかむと、レジ袋からひょいと引っぱり出す。

「さてもなかなか目ざといですな」

そのレジ袋の中からキャットフードの缶詰を三缶取り出し披露する。

「さてはお味はいかにいたしましょう」

珠子は子猫を抱き上げ、

「わぁ、贅沢!どれどれ、ビーフにチキンにツナ…やっぱビーフかな」

と、珠子が見つくろうと

「肉ときたか…今時の子やな。おれらの世代やと猫ゆうたら魚ゆうイメージやけどな」

「じゃ、ツナで」

「かしこまいりました。しばしお待ちを」

伯父さんはうやうやしくお辞儀すると、レジ袋からさらにスペシャルな容器を取り出す。それというのも、クリスタルに似せたアクリル樹脂製のカクテルグラスである。どうやら100円ショップでわざわざ仕入れてきたようだ。

伯父さんはしたり顔で、カクテルグラスにプッチンプリンの要領でツナ味キャットフードをプルルンと落とし込む。

ひとときテレビで、ゴージャスなペルシャ猫が本物のクリスタルのカクテルグラスに盛りつけられたキャットフードにがっつくCMが放映されていたが、何だかそれを彷彿させるのは単なる気のせいか。

伯父さんは珠子の手から子猫をかっさらうと、床に座らせる。こんもりとキャットフードの盛られたカクテルグラスを目の前に差し出す。

かたずを?んで見守る珠子と伯父さん。

が、理想は高く現実は厳しいのが世の常。伯父さんの目論見とは裏腹に、ちょっかい一撃。子猫ごときに横っ面を張り倒され、カクテルグラスはあえなく陥落。床の上でぼっとっとへちゃげるキャットフード。

「あらら」

床に投げ出されたキャットフードを、むしゃむしゃと満足げにむさぼる子猫であった。

「これがツナやのうてナマズやったらえらいこっちゃなぁ」

「何で?」

「ナマズは英語でキャットフィッシュゆうやろ。共食いになってまいよる」

「…」

「さ、われわれも飯にしよ」

落ちが滑ったところで、伯父さんはそそくさと食卓のしつらえに取りかかる。

-第1回-チャリンコチャリンコうれしいな♪

私の名は青桃。小説家にして無類のチャリンコ狂。
千林に暮らして云十年。未だ知らないとこだらけ。
けれど、これだけは言わせて~。
旭区、千林界隈めぐるならチャリンコが一番!今日も青桃ご自慢の愛車あおうま号に跨がりポタリング。
風の吹くまま気の向くままお散歩ならぬお散輪。愛と冒険の旅へといざないます。
さて、どこへ行こかいな?

 

?はじまりました『気ままに陽だまりお散輪』栄えある第一回。
このブログのスタンスはと申しますと、青桃が気ままに綴るエッセイなんでございます。
「それじゃ今までとえろ~変わらんやないか~い!」とツッコミたまわりそうな気配ですが…ままそうおっしゃらずに(^^;)。
前回までのブログ分析に寄りますと、最も引きが良かったコンテンツはなんと言っても千林界隈にちなんだネタ。
「そうか、世の人々は地元愛に飢えているにちがいない!」との勝手な解釈に基づき、どうにかしてこの溢れんばかりの地元愛を表現せんとて、青桃最適な手法をあれこれ模索。
「そや、チャリンコでポタリングするような感覚で、ビビッドに日常の悲喜交々を切り取ってみよう」と思い至り、青桃ブログ『気ままに陽だまりお散輪』をリニューアルオープンにこぎつけた次第であります。
もっと千林に、もっと旭区界隈に光あれ!とばかりに、縦にも横にも斜めにも様々な切り口で、日々繰り広げられる由無し事を、時に青桃独自のエッセンスを配合しつつ綴ってまいります。
お後は読者の皆様のよしなに。

さて、お散輪と申しますからには、まずは自転車の調達から。
「えぇ、そこからか~い?」とまぁずっこけそうな話なんですけれど(^^;)。
ここらでひとつママチャリを卒業し、昨今流行のスポーツサイクルなるものに乗り換えて、ちょいといかした青桃へ魅惑の変身~。
なんて昭和チックな言い回し。
「たかだかブログの為だけに自転車買い換えるとはあほとちゃうん」とお思いの方。
なんのその、さらに上を行く強者がおりまして。1000ピースプロジェクトリーダーさかもっちゃんにいたっては、フリーペーパー『みてみて』の記事を書くのに、以前の住まいを引き払い不動産屋さん3軒はしごした挙げ句、ついには千林に移り住んできたという武勇伝の持ち主なんやから。※詳細は2013年『みてみて』vol.4、vol.7、vol.11『さかもっちゃん千林に住む』をご参照のこと。
『みてみて』のために金と人生を懸けた、まさに体を張っての大博打!体当たり取材。それからすれば新車への乗り換えくらいまだまだ序の口。
しかも自動車やのうて自転車やで。かわいいもんよ。

ところで、チャリンコと言えばげんさん。
この人を置いて他にはあるまい。げんさんは1000ピースきってのチャリダー。
実業団での活躍の経験もある筋金入りのロードレーサーなのだ。親切で誠実で男前、その上ロードレーサーにありがちな大食漢。自転車って本気出してこぐと、ものすごくカロリーを消費するんだそうな。
はたして、新婚ほやほや浮かれぽんちのげんさんから耳寄りな情報を聞き出せるであろうか。いつもながらもりもりと惚れ惚れするような気持ちのええ食べっぷりのげんさんのお隣にちゃっかり陣取って、青桃早速リサーチ開始。相変わらずさわやかな笑顔で快く応じてくれる。ただしその内容たるや…「どうせ買うんなら20万、30万くらいのもん買わなぁ。
すぐに飽きて買い換えるはめになるから」うわぁ、いきなり敷居高すぎ~。あせる青桃をよそに、次々と専門用語を駆使し解説するプロフェッショナルげんさん。「やっぱりフレームはカーボンファイバーが一番いいかな」カーボンファイバーってあんた、ポルシェかフェラーリか、はたまたランボルギーニか。スポーツサイクルやゆうてもたかだか普段使いのチャリンコやで。なんぼなんでも高級スポーツカーやあるまいし。げんさんはいったいこの青桃に何させる気なんやろぅ。

前途多難のチャリンコ探し。旅はまだ続く…