2015年02月

第2話-真相は壁の中-

はしがき

ここは大阪千林。下町風情が今に息づく横丁。そっと耳を澄ませば聞こえてくるはず。不機嫌な気まぐれものたちの呟きが。「ひとりが好きなわけやないけど、だれかと一緒もきゅうくつ」俗世の垢にまみれ日々あくせくする横丁の住人たちをよそに、日がな一日ごーろごろ。退屈しのぎにぶーらぶら。そんな猫たちのお気楽な横丁暮らしを見るにつけ、物憂さなんてどこへやら。「喜びも悲しみもつかの間。のんびりいこや。生きるってメランコリーにあふれてるんやから」

第2話-真相は壁の中-

「おまえ大丈夫か?悪い夢でも見たんとちゃうか」

朝になって珠子は待ってましたとばかりに伯父さんに連絡を取る。が、スマートフォンの向こうから聞こえてくるのは、暢気に笑う伯父さんの声。

「確かに。一晩中悪夢だった。けど、この状況は夢じゃない。この声聴いてよ」

珠子はスマートフォンを壁に押し当てて、先ほどから壁の中でミャーミャーと鳴き続ける猫の声を聴かせる。

「いくらなんでも壁の中に猫はないやろ。どっかよそで鳴いてるんやて」

「いや、絶対に壁の中にいるって。嘘だと思うんならきてみてよ」

珠子の必至な声に、伯父さんは益々大笑いする。

「わかったわかった。取りあえずすぐそっちへ行くから。朝飯喰ったら落ち着くやろ。一緒にモーニングでも行こ」

一先ずスマートフォンを切って伯父さんを待つことにする珠子。

『何がモーニングよ。朝飯よりも工具がいるわ』

伯父さんの応対に不満を募らせる珠子であったが、ともかく今は伯父さんの到着を待つよりほかない。壁の前で神経病みの狼のごとくうろうろと歩き回る珠子。一向に鳴き止む気配のない壁の声。

程なくして伯父さんがやって来た。珠子は玄関先まで素っ飛んでいく。

扉を開けて珠子の顔を見るなり、伯父さんはにたにた笑う。

「どうしたどうした。猫と言うより、熊がおるやないか。大きな隈がお前の目の下に二匹も」

伯父さんのくだらないおやじギャグに、珠子の苛立ちはピークに達する。珠子は伯父さんの腕をつかむなり、部屋まで引っ張っていく。

「おいおい、妙齢の女性の部屋にことわりもなく押し入るなんてはしたないこと、いくら伯父さんでもようせんわ」

「四の五の言ってないで早く早く」

ふたりが部屋までたどり着くと、物音ひとつなく静まりかえっている。

なんたってまたこんな時に限って押し黙ってしまうとは。珠子は壁に向かってけしかける。

「鳴けったら鳴け!」

不意に不安に襲われる珠子。まさか、伯父さんが与太事のたまってる間に、壁の奥でくたばっちゃったとか…

「ほれ、言わんこっちゃない。せやから壁に猫なんて…」

と伯父さんが大笑いしようとした刹那

「みゃー!」

伯父さんは俄に神妙な顔つきになると、つかつかと壁に歩み寄る。そして、壁に耳を押し当てるなり、珠子の方を振り返る。

「えらいこっちゃ。ほんまに壁の中に猫がおるがな」

青桃最新作!10月に出版しました。

やりました!またしてもやってしまいました!
待望の!?第4作目が2017年10月、ついにそのベールを脱ぎお目見えと相成りましてございます。
その名も「Kiss Incomplete(キス インコンプリート)」。青桃初の横文字タイトル。
「何や、えらいいきっとんな」なんて失笑を買われそうですが…これには深い事情がございまして。とまぁ、そう大袈裟にもったいぶるほどの訳でもないのですが…。タイトルの決定の経緯につきましては、またの機会にでも。

他にも作品にまつわるエピソードや、作家にしか知り得ないこぼれ話なんかも、追ってブログでご披露できたらなぁ~なんて目論んでおる次第であります。

何はともあれ取りも直さず肝心要は本の中身。ですよねぇ。で、気になる内容はと言いますと…
人里離れた山野から大都会の歓楽街までをまたに掛け、舞台狭しと駆け巡る愛と冒険のストーリー。
クライムサスペンスをベースに、複雑に綾なす人間関係、その下で見え隠れする事件の真相。一見別件と思われる事象にも思いの外深い繋がりが…やがて点と点は線となり真相の核心へと迫る。そして事件は予想外の結末へと昇華されていく、といった所でしょうか。
詳しいストーリー並びにコンセプトにつきましては以下のカバーをクリック!

文芸社「Kiss Incomplete」青桃著

さて、ご購入に関しまして…ここは商魂たくましくまいりましょう!
店頭でのご購入をご検討の方、小説家「青桃」集 インフォメーション 「Kiss Incomplete」取扱い書店にて店舗の一覧をご覧いただけます。
インターネットでのご購入も可能です。Amazon ←アマゾンでのご購入をご希望の方は、こちらをクリックくださいませ。
もちろん、お住まいのご近所の書店やご贔屓の書店でのご購入も大丈夫!お目当ての書店にて「文芸社「Kiss Incomplete(キス インコンプリート)青桃著」とお知らせいただければ、お取り寄せでご購入いただけます。

ところで、お気づきの方もいらっしゃるかと存じますが、ここ一年ほどfacebookもブログもお休みしておりました。と申しますも、すべてはこの作品のため。お休みの間、執筆に全精力を注ぎ込んでおりました。青桃の本作にかける意気込み、伝わりましたでしょうか。青桃渾身の力作、皆様にお読みいただけましたら幸いです。

さて、もうろそろそfacebookのチェックやブログの更新の方も再始動しないとなぁ。でないと、このまま惰性に流されて…なんてことにもなりかねないし。これまでアップロードしてきたブログデータのお引っ越しも済んでいないし。
とはいえ、そこはのらりくらりがモットーの青桃。ぼちぼちモチベーションあげていきまひょ~っと。

春節ってお正月のこと?


2月8日から春節が始まります。春節と聞きくと、近年では大挙して押し寄せる中国人観光客による“爆買い”を思い浮かべてしまいますが…(^^;)。その“爆買い”最近では日用雑貨や家電、医薬品にとどまらず、さらに体験型施設にまで及んでいるんだとか。美容、カラオケ、居酒屋…ラブホテルにいたるまで(^^;)。ラブホと言っても、奇抜な外観やバスルームやベッドなどの凝った内装に興味をそそられてのこと。この調子だと近いうちに地方の田舎の結婚式場にまで足を伸ばす観光客も現れるやも。いくら中国経済が爆発的な発展を遂げたとは言え(近頃陰りも見え始めてはきておりますが)海外を訪れる経済力のある中国人はやはりほんの一部。春節となると中国国内では、多くの人々が日本の盆暮れ同様、親元へ帰省したり遠方の親族知人を訪ねたりするのだとか。13億人以上の人口を抱える中国。皆が皆移動するわけではないにせよスケールが桁外れに違う。さながら民族大移動と言ったところでしょうか。春節と言えば日本では“旧正月”にあたる。日本では明治時代1873年にグレゴリオ暦が採用されて以来、正月をはじめとするすべての暦が太陽暦で勘定されるようになった。中国、韓国、台湾、ベトナム、北朝鮮、シンガポール、マレーシア、インドネシアetc.アジア各国は太陽暦を採用していようとも、旧暦で歳時や年中行事を執り行っている。日本だけが異例なのだ。そもそもアジアモンスーン地帯に暮らす農耕民族にとっては、旧暦のほうが季節感がしっくりくるように青桃なんかは思う。新暦と旧暦とではほぼ5週間ずれている計算になるのだが、一年で最も寒くなるのも2月上旬の時期を大晦日、元旦に当てはめてみると、お伽話の「笠地蔵」のシチュエーションも合点がいく。もう近々やってくる3月3日桃の節句にしても、旧暦だと4月7日くらいにあたりちょうど桃の花が開花する時期と合致する。5月5日端午の節句は旧暦では6月9日くらいとなって、初めを意味する「端」と太陽が最も高く南中する「午」の方角とで、間もなく訪れる夏至とぴったり一致するのだ。世界標準が太陽暦となった現代、今更旧暦に戻してくれ~とまでは思わないものの、人類の歴史において長きにわたり積み重ねてきた旧暦。先人の知恵が詰まっている。温故知新、今少し見直してみると、地球に優しい生き方を模索する上で大いにヒントとなるかも。